ChatGPTの開発者 “サム・アルトマン氏” はどのような人物か。彼が20代で起業した位置情報SNS「Loopt」とは? ─ Yコンビネーターのポール・グレアムとの関わりについても探る。

4月前半に日本で一部の界隈がざわつくニュースが報道された。ChatGPT を開発している企業 OpenAI の CEO である、サム・アルトマン氏が来日し、4月10日午前、総理大臣官邸を訪れて、岸田総理大臣と面会したのである。
彼は一体、どのような人物なのだろうか? また、なぜ ChatGPT が世界を席巻しているさなかに、わざわざ我が国の首相を訪問したのだろうか。そこにロビー活動のような政治的な意図がどれほどあるのか。日本進出の可能性はあるのか… 疑問は多い。

2023年4月上旬時点で、日本のChatGPTユーザーは100万人超え

日本の来日時には、自民党の「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」にも出席した。この席で「日本では、100万人を超えるユーザーが ChatGPT を使っている」と発言したという。

※ なお、別の報道においてロイター通信によれば、「ChatGPT」はサービスが開始されてからおよそ 2か月の時点で、月に1回以上サービスを利用した人が既に1億人に達したといい、このデータは、世界のあらゆるサービスの中で最も速く成長している。TikTokやInstagramが多くのユーザーを抱えたときよりも何倍もペースが速いのだという。

自民党の会議に出席していた、赤松健参議院議員はTwitterで、「今後クリエイターなど権利者とどう付き合っていくか」を質問したことに対して、「何らかの方法で経済的に報いたい」との回答を得たとツイートしている。

さらに、塩崎彰久衆議院議員は、サム・オルトラン氏によって下記の7つを提案が行われたことをツイートしている。

 

日本市場に向けて、Open AI のCEOが提案した7つのこと

  • 日本関連の学習データのウェイト引き上げ
  • 政府の公開データなどの分析提供等
  • LLMを用いた学習方法や留意点等についてのノウハウ共有
  • GPT-4の画像解析などの先行機能の提供
  • 機微データの国内保全のため仕組みの検討
  • 日本におけるOA社のプレゼンス強化
  • 日本の若い研究者や学生などへの研修・教育提供

また、アルトマン氏は「ChatGPT」を日本文化に合わせたよりよいものにしたいと考えているといい、数か月後にふたたび来日する予定であることを述べたという。

2023年3月 / OpenAIのCEO、サム・アルトマン(Photo: Jim Wilson/The New York Times)

 

サミュエル・H・アルトマン氏とはどのような人物か

8歳で人工知能に興味を持つ

サミュエル・H・アルトマン(Samuel H. Altman〈[ˈɔːltmən] AWLT-mən〉、1985年4月22日 – )は、アメリカ人起業家兼投資家でプログラマーである。 OpenAI社の最高経営責任者でYコンビネータの元代表。人工知能(AI)ブームの最前線に立つ米新興企業 Open AI のCEO を務める サム・アルトマン氏(37)は、わずか8歳の誕生日に買ってもらったアップルのコンピュータを初めて触ったとき、「いつの日か、コンピュータが考える日が来る」と、察したという。コンピューターが人間のように会話し、学習する未来を長い間、夢見てきた。

アルトマン氏は、米国・セントルイス郊外で、4人兄弟の長男として育った。母親は皮膚科医。父親(5年前に他界)は弁護士などさまざまな職業についたが、違う側面を持っていた。彼の家族によると、父の天職は、「手頃な価格の住宅を提供する非営利団体」の運営だった。長年にわたり、セントルイスのダウンタウンを活性化しようと尽力したという。こうした家庭で、

父親から教えについて、アルトマン氏は話す。

「常に人を助けること。たとえ時間がないと思っても、どうにかすること」

 

アルトマン氏が率いるOpenAIは、2022年11月に大規模言語モデルGPT-3を搭載した生成型AI「ChatGPT」を発表。さらに2023年3月には「GPT-4」を発表した。このプロダクトは、人間のように文章を書ける驚くべき能力を持ち、テクノロジーの歴史で最も人気のある製品の一つとなった。同社は、小さな非営利団体であったが、すぐに数十億ドル規模の企業へと成長しました。この驚異的な成長は、投資家に向けた資料によると、Microsoftからの1300億円(約1兆7000億円)の資金提供を受けた営利部門を立ち上げたことが大きな要因となっている。

サム・アルトマン氏は、オープンAIの共同設立者/CEOとして、人工知能(AI)の開発をリードしているが、もともとは「非営利」の研究団体としてオープンAIを設立しており、AI開発において利益をインセンティブとすることには警戒心を持っているという。彼は、起業家というバックグラウンドもあり、金銭的な利益に興味はあるものの、それが全てではないと述べています。彼の目標は、機械が人々を解放し、より創造的な仕事に専念できる世界を築くこと、とウォール・ストリート・ジャーナルの取材のなかで触れられている。

 

20代前半に、起業家として一度成功を収める

アルトマン氏は、自身のビジネスで大成功を収めた経験があり、サンフランシスコの豪邸や週末用住宅など、3軒の家を所有している。すでに経済的には成功している中で、真のミッションとして人類の発展のために取り組んでいるのである。

アルトマン氏はまた、社会に出たばかりの頃、スタートアップ企業への共同創業者としての参画・投資により、大きな利益を得た。「自分が一生で必要とする以上のお金」を稼いだと語っている。これにより、彼のビジョンに対する純粋さや、金銭的な動機ではないことが、強調されています。

アルトマン氏は、20代前半の頃にLooptという位置情報を利用したソーシャルネットワーキングサービスを開発した。Looptは、友人の位置情報をリアルタイムで共有し、現在地周辺のイベントやお店を見つけることができるアプリで、2005年に設立された。その後、スマートフォンが普及しはじめたことから、このようなSNSが若者で注目された時期と重なる。

Looptは、モバイル位置情報サービスを提供する会社で、このスタートアップは、友達の位置情報をリアルタイムで共有し、近くにいる友達を見つけることができる機能を提供していたことで知られている。また、Looptは、スマートフォンのGPS機能を活用して、ユーザーが近くのレストランやショップなどの情報を得ることができるようにしていた。

アルトマン氏は、Looptのビジョンや製品開発を率いており、彼は、Looptが位置情報サービスのパイオニアとしてスマートフォンアプリ市場に参入し、多くの顧客を獲得することに成功したことを語っている。彼は、スタンフォード大学在学中に同じアイデアを持っていた友人と共にLooptを設立し、後にY Combinatorに参加した。

Looptはその後、2012年にGreen Dot Corporationに約4,300万ドル(約50億円相当)で買収された。この買収後、アルトマン氏はLooptを去り、他のプロジェクトに取り組むようになったその後、彼はY Combinatorでの経験を生かして投資家としてのキャリアを築き、さらにOpenAIの設立に携わることになる。

アルトマン氏は、過去のインタビューや記事でLooptでの出来事について語っており、Looptでの経験が彼の起業家精神や技術への情熱を形作る上で重要な役割を果たしたことを明らかにしている。また、Looptでの成功が彼のビジョンやリーダーシップ能力を高め、後のキャリアにおいても大きな影響を与えていることがわかる。

 

Yコンビネーターの経営者としての経歴

Yコンビネーター(Y Combinator) とは、シリコンバレーの有名なスタートアップ・アクセラレータであり、創業者たちに投資を行い、助言やサポートを提供してビジネスを成長させることを目的とした組織だ。Yコンビネーター創始者のポール・グレアム(Paul Graham) 氏は、日本でもIT技術者に親しまれている著書「ハッカーと画家」の著者であり、現在も多くのスタートアップ関連のエッセイを書いている。自身のキャリアとしても、Lispエンジニア・起業家としてスタートしており、その成功ののち、投資家としてYコンビネーターを立ち上げた。

Yコンビネーターは、Airbnb、Dropbox、Stripe、Coinbase、Reddit などの多くの有名なテクノロジースタートアップを育成・輩出しており、その成功は世界中の起業家たちから注目を集めている。ポール・グレアムの意思を継ぐ形で、サム・アルトマン氏は、2014年から2019年までYコンビネーターの社長を務めることになった。彼が在任中の5年間で、多くのスタートアップ企業の成長を支援している。

サム・アルトマン氏が Y Combinator の経営者に抜擢された理由については、彼が以前からY Combinatorの一員であり、起業家や投資家として成功を収めていたことが大きな要因だという。また、彼の技術への情熱やリーダーシップ能力が評価されたことも影響している。

ポール・グレアム氏とサム・アルトマン氏の関係については、二人は Y Combinator を通じて知り合い、お互いに尊敬し合っているとされている。サム・アルトマン氏は、ポール・グレアム氏の考え方や Y Combinator の哲学に影響を受けており、Y Combinatorでの経験が彼のキャリアに大きな影響を与えたと言われている。

サム・アルトマン氏がY Combinatorの社長に就任することを発表したブログ記事 (https://blog.ycombinator.com/sam-altman-for-president/) が参考になるだろう。

マイクロソフトとの契約によって賛否両論を受けているサム・アルトマン氏

彼の支持者たちは、彼が信奉する社会意識の高い資本主義を理由に、オープンAIのリーダーとして最適だと主張しているが、一方で批判的な意見もある。マイクロソフトとの契約の事実など、アルトマン氏の商業志向が強すぎるという指摘である。

オープンAIは、マイクロソフトと100億ドルの契約を結び、マイクロソフトが同社営利部門の株式の49%を所有することになった。この提携は、Open AI 設立当初に関わったステークホルダーや、リーダーたちを幻滅させる結果となった。アルトマン氏は、オープンAIの究極の使命は、人間のように理解し学習できる「汎用AI(AGI)」を安全に構築することだと述べている。

OpenAI の CEO サム アルトマン (Sam Altman)(左) と、マイクロソフトの CEO サティア ナデラ (Satya Nadella) 出典: news.microsoft.com

 

イーロン・マスク氏やスティーブ・ウォズニアック氏らは、公開書簡を通じて、制御不能に陥りかねない技術競争を食い止めるため、オープンAIが発表した最新のGPT-4より強力なAIの開発を6カ月間停止するよう求めたという報道があった。オープンAIは、他のプロジェクトが自分たちより先にAGIの構築に近づいた場合、研究活動を放棄することを約束しており、競争によって危険なAIシステムを構築する競争を避け、人類の安全を最優先すると表明している。

イーロン・マスク氏は、オープンAIがオープンソースの非営利団体として設立されたのは「グーグルに対抗するためだったが、今ではマイクロソフトに事実上支配されたクローズドソースの、利益を最大限に追求する企業と化している」と批判した。アルトマン氏はマスク氏からの批評について、「私はイーロンのことが好きだ。彼の発言には注意を払う」と答えている。

シリコンバレーの著名な投資家、ピーター・ティール氏は、アルトマン氏が AGI(汎用的人工知能) の可能性から、何か似たような技術によって宇宙は創造されたという考えを抱くようになった、と話した。オープンAIの設立趣意書において、アルトマン氏は、競争から危険なAIシステムを避けるため、他のプロジェクトが自分たちより先に AGI の構築に近づいた場合、研究活動を放棄することを約束している。

総じて、サム・アルトマン氏は、オープンAIのCEOとして人類に対する安全性を重視し、AI開発において利益主義を避ける姿勢を持っている。彼は、利益がインセンティブとなることを警戒し、自身は直接金銭的な利害関係を持たないことを明言した。アルトマン氏は、金銭的な利益を追求することが人類のためにならないという信念を持っており、オープンAIが非営利の研究団体として設立された背景にもその考えが反映されている。

 

過去のインタビューから分かるサム・アルトマン氏の思想

ベーシックインカムの社会を示唆

サム・アルトマン氏は過去のインタビューで、様々なテーマについて語っている。彼は、AI技術が将来的に仕事の自動化によって大量の失業が発生する可能性について懸念を示した。そのため、彼はユニバーサル・ベーシックインカム(無条件で誰にでも現金を支給する概念)の導入を支持し、AIによって仕事が奪われる人々の収入を補う方法として提案しています。

長期的にはAIの未来に関する決定を監督するグローバルな統治機構を立ち上げ、オープンAI経営陣の力を徐々に弱めていきたい考えを持っているようだ。彼はユニバーサル・ベーシックインカム(無条件で誰にでも現金を支給する概念)が、AIに取って代わられる仕事の収入を補うのに役立つと考えている。

さらに、アルトマン氏は、高度なChat Botが、「あなたの意志の延長」となる可能性があると考えている。

AI技術の開発において、公平さを重視する姿勢

また、アルトマン氏は、AI技術の開発において、技術の民主化や公平な利用を重要視している。彼は、AIが限られた企業や国によって独占されることを避けるため、研究成果や技術を広く共有することを提唱。この考え方は、OpenAIの使命にも反映されており、同社は「人類全体の利益を最優先し、AIの恩恵をできるだけ多くの人々に届ける」ことを目指して活動している。

さらに、アルトマン氏は、創業者や起業家に向けたアドバイスとして「大胆なアイデアや目標を持ち、それに焦点を絞って取り組むことの重要性」を強調する。彼は、成功するためには、時には一般的な考え方にとらわれず、独自のビジョンを追求することが不可欠だと語った。

また、アルトマン氏は、効率的なチームの構築やコミュニケーションの重要性にも言及しており、優秀な人材を集めることが成功に繋がると述べている。彼は、才能のある人々が集まり、共通の目標に向かって協力する環境を作ることが、イノベーションを生み出すための鍵だと考えているようだ。

サム・アルトマン氏は、技術とビジョンを組み合わせた独自のリーダーシップで、数々の成功を収めてきた。彼の業績は、AI技術の発展やスタートアップ企業の支援を通じて、世界中の人々にインスピレーションを与えている。

ChatGPT を始めとしたOpenAIの動向について、サム・アルトマン氏を語らずに理解することは出来ないだろう。今後も彼の活動から目が離せない。

参考文献:  https://blog.samaltman.com/

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